2色ページ 環境とからだ・7
環境汚染とその対策(1)
長谷川 敬彦
1
1名古屋大学環境医学研究所
pp.1108-1111
発行日 1974年11月1日
Published Date 1974/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917127
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我々を取り巻く未知の‘危険性’
人間は環境の関数である,と同時にまた人間は環境を変えることができるものである.だれでも,閉めきった部屋で炭火をたけば,炭火からの一酸化炭素がたまって,一酸化炭素による中毒を起こすことを知っている.これは炭火をたいて暖をとるという人間が作り出した環境が,人間に影響—被害—をもたらすことを生活の知恵として知ってきたし,またその実体が一酸化炭素であることも明らかになっている.
現在,我々を取り巻く環境は,このように危険をもたらす要因がはっきりしている場合,予測しうる場合とともにそれ以上に近代工業の発展と工業生産の拡大は未知の‘危険性’への要因を急速に増大させている.エコノミックポイズンと呼ばれている農薬は,除虫菊(ピレトリン)以来使用されてきたが,1940年代BHC・DDTなどの有機塩素系,パラチオン・マラチオン・TEPPなどの有機リン系殺虫剤の登場は,確かに農作物の生産性の向上に目覚ましい効果を示したし,マラリアの撲滅にも大きな役割を果たしてきた.しかし有機塩素系殺虫剤は,化学的な安定性がよいという殺虫剤としての利点は,反面残留蓄積性という側面を表してきている.しかもその蓄積性は,土壌,植物,動物,人間,更に母乳を通し,ヒトからヒトへと食物連鎖を通してヒトへの蓄積が起こってきている.
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