Topics 1998
薬剤耐性菌感染症バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
大野 章
1
1東邦大学医学部微生物学教室
pp.1463
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903909
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1.はじめに
バンコマイシンは土壌細菌の一種Ameycolatopsis orientalisが産生するグリコペプチド系抗生物質で,McCormicらにより1955年に発見された.この系統の抗菌薬にはバンコマイシンやテイコブラニンがあり,グラム陽性菌に優れた抗菌力を示し,主にメチシリン耐性ブドウ球菌感染症や腸球菌感染症の治療薬として積極的に用いられてきた.一方,1990年代に入り,従来にない新たな耐性遺伝子を獲得した抗菌薬耐性菌による感染症が世界的な規模で流行し大きな問題を起こしている.1986年以降欧米を中心に流行しはじめたバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症もそのような感染症の1つである.腸球菌はもともと抗菌薬に自然耐性を示す菌種の1つであり,そのため腸球菌感染症に対する治療薬は限られる.治療薬としてはバンコマイシン以外にペニシリンとアミノ配糖体の併用が用いられてきたが,最近これら3剤に同時に耐性を示す多剤耐性腸球菌による院内感染症が米国を中心に多発し,その対策が苦慮されている.日本でも最近VRE感染症が散発的に報告されはじめている.
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