特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際
12) 感染症 (11)VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
高倉 俊二
1,2
Shunji TAKAKURA
1,2
1京都大学医学研究科臨床病態検査学
2京都大学医学部附属病院検査部 感染制御部
キーワード:
バンコマイシン耐性腸球菌
,
vanA
,
vanB
Keyword:
バンコマイシン耐性腸球菌
,
vanA
,
vanB
pp.1521-1526
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101449
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はじめに
臨床上の問題となるバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococcus;VRE)はvanA,vanBなどの外来性の耐性遺伝子を保有した腸球菌を指す.腸球菌は腸管内常在細菌叢をなす菌であるため,尿,手術創部,ドレーンチューブなどから少数検出されても感受性試験の対象にならず,ほとんどの個体では無症状保菌状態である.したがって,VREは積極的に見つけようとしなければ検出困難であり,臨床検体から偶然検出された場合にはすでに院内感染が拡がっている可能性が高い.コストと労力を勘案したうえで,いかに院内のVRE保菌者早期発見体制をとるかが各病院にとっての課題であり,必要なものは選択培地とPCR(polymerase chain reaction)などによるvanA,vanB遺伝子検出のみである.
米国では1990年ごろから院内集団感染として急増し,近年では院内で分離される腸球菌の10~30%がVREとされる1).日本では1996年にvanA型Enterococcus faeciumが初めて臨床分離され2),1999年に北九州の病院で初めての院内集団感染が明らかになった後に,感染症法による全数把握の届出感染症となったが,近年確実に増加傾向(60~70件/年)にある3).
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