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MRSA (methicillin-resistant S.aureus)は感性株には,存在しないペニシリン結合蛋白(PBP 2′)を産生し,ほんどんどすべてのβ-ラクタム系薬剤に耐性を示す.PBP 2′の構造遺伝子mecAはMRSAの染色体上に存在していることはこれまで知られていたがさらに,mecAを含む外来遺伝子領域(mecDNA)には少なくとも3つのタイプがあること,それらはいずれもブドウ球菌の染色体上の特定の位置に挿入されていることが明らかになった(図1).mecDNA上の遺伝子を検索した結果,転移に関与すると思われる酵素の存在が明らかとなり,mecDNAがなんらかの形で菌種間を転移することが示唆されてきている.MRSAの検出は薬剤感受性試験による方法が一般的でありNCCLS (National Committee for Clinical Labora-tory Standards)ではオキサシリンに4mg/L,メチシリンに16mg/L以上のMICを持つS.aureusをMRSAとしている.遺伝子検査においてはmecAおよびmecDNAの塩基配列を利用してプライマーを作製しPCRで行う方法が一般的であり,すでにキットも市販されている.しかしmecAはコアグラーゼ陰性のブドウ球菌(MRC-NS)にも存在するためMRC-NSも同時に検出してしまう問題点がある.このような点を改善すべくS. aureusの染色体上の遺伝子上にプライマーを作製し同時にPCRを行う方法(Multi-plex PCR)やmecDNAの右端末端の塩基配列と隣接したS.aureus染色体上にプライマーを作製してPCRを行う方法(mec right extremity PCR)も考案されている.
MRSAの高度耐性イヒと多剤耐性化が進行した結果,1990年代にはバンコマイシン(VCM),アルベカシン(ABK),ST合剤以外の薬剤には耐性を示すMRSAがほどんどとなった.VCM, ABKがMRSAに対処する薬剤として使川されている状況のもとでVCM治療無効例からVCM耐性MRSAが日本およびアメリカで分離され問題となっている1).耐性株のVCMに対するMICは8 mg/Lである.VCMの組織移行性を考慮するとNCCLSの基準では中間に分類されるこのMIC値でも,組織内に存在する菌には効果がないと考えられる.VCMのMICが8mg/L以上を示す耐性株は,幸いなことに現在は非常にまれであるがヘテロ耐性株はかなりの頻度で分離される.このヘテロ耐性株をVCMを含有する平板(4 mg/L)に塗布するとVCM耐性株が出現する.このことからVCM治療が有効でないMRSAの場合,VCMのMICが4以下であっても,ヘテロ耐性株であるかを検討することは,治療上重要であると思われる.ヘテロ耐性株の検出法はいくつかあるが,VCMとβ-ラクタム薬剤との拮抗作用を利用した方法(図2)が最も簡便である.詳しくは文献を参照されたい.
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