特集 感染症診断へのアプローチ
総論
Ⅰ.感染の成立と生体防御
神谷 茂
1
Sigeru KAMIYA
1
1杏林大学医学部微生物学
pp.1188-1211
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903881
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
宿主と病原体の関連
1.感染の定義
感染(infection)とは微生物が生体宿主に侵入して定着,増殖し,なんらかの障害を与え,結果的に宿主に免疫反応を惹起させることと定義される.この定義の背景には,宿主と微生物という2生物間の共存状態,つまり共生(symbiosis)の考えが存在している.Theobald Smith (1934年)は感染とは"2つの異質な生物,すなわち宿主と微生物との問に成立する生態学的反応(ecologicalreaction)である"と解釈したが,この考えは現在にも適用できるものである.
感染後,宿主に明らかな臨床症状が引き起こされた場合(発症;overt disease),これを顕性感染(apparent infection)と呼び,引き起こされた疾病が感染症(infectious disease)である(図1).一方,感染により,なんら臨床症状が引き起こされることなく,生体宿主に免疫反応のみ残す感染形態を不顕性感染(inapparent infection)と呼ぶ.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.