特集 感染症診断へのアプローチ
総論
Ⅱ.感染症診断の進め方
平泻 洋一
1
Youichi HIRAKATA
1
1長崎大学医学部附属病院検査部
pp.1213-1227
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903882
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はじめに
優れた抗菌薬の開発や公衆衛生の発達などにより,多くの医療従事者はほとんどの感染症を制圧できたかのような錯覚に陥っていた.しかし,エイズや病院感染などが社会的な問題になり,最近では至る所で"新興・再興感染症"という言葉を耳にするようになった.再興感染症の中にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に代表される薬剤耐性菌による感染症も含まれている.抗菌薬の過剰投与もこれらの薬剤耐性菌の蔓延の一因と考えられ,正しく感染症の診断を行うことが抗菌薬の適正使用にもつながるものと思われる.感染症の種類によっては,診断の遅れが当該患者のみならず,周囲の患者あるいは医療従事者への二次感染を起こす場合もある.また,臓器移植に代表される医療の高度化に伴い,健常人には病原性を発揮することがまれな弱毒微生物による感染症である日和見感染が増加している.このような状況の中で感染症の垂要性が再認識されるようになってきた.感染症患者に対し適切な治療を行うための第一歩は正確かつ迅速な診断を行うことである.しかし,必ずしも典型的な症状を呈する患者ばかりでなく,種々の炎症性疾患や悪性疾患などとの鑑別が必要な場合も多い.ここでは,単なる病原診断にとどまらず,感染症の診断の進め方全般について概説する.
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