特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅰ.生化学・遺伝子
11.SCARMDまたはsarcoglycanopathy
水野 裕司
1
,
小沢 鍈二郎
2
Yuji MIZUNO
1
,
Eijiro OZAWA
2
1国立精神・神経センター 神経研究所,群馬大学医学部神経内科
2国立精神・神経センター 神経研究所
pp.1282-1286
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903477
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はじめに
X染色体劣性の遺伝形式をとるDuchenne muscu-lar dystrophy (DMD)とよく似た疾患にsevere child-hood autosomal recessive muscular dystrophy(SCARMD)がある1,2).この疾患は最初DMDの一部として扱われたが,その後常染色体劣性の遺伝形式をとることがわかり,DMDとは全く異なった疾患と理解された.すなわち,サルコグリカン複合体の構成成分であるα-3),β-4,5),γ-6),δ-7,8)サルコグリカン遺伝子のうちのいずれか1つの変異により,その蛋白質の合成に異常をきたすことが原因で起こる疾患である.ところが,4種類のサルコグリカンのどれか1つが失われると二次的に複合体全体が失われることになり,そのために,筋の変性や壊死が生じると考えられている.現在ではSCARMDは疾患の集合であり,生化学的に明らかにされたサルコグリカン複合体の異常であることが判明している.わが国におけるSCARMDの患者数はDMDの5%程度ではないかと推定されており9),血族結婚が少ない日本においては今後この数字が増えることはないだろう.一方,いとこ婚などが習慣的に行われているアラブ圏,例えばクウェートではDMD患者の36.6%であるという報告もある10).DMDとSCARMDを別々に論ずることは困難であるが,ここでは後者を中心に述べることにする.
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