特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の検査
2.血液凝固系の検査
10)組織因子
中村 伸
1
Shin NAKAMURA
1
1京都大学霊長類研究所分子生理
pp.131-134
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903102
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はじめに
組織因子(tissue factor;TF)は図1に示すように,細胞表面に発現されるレセプター様因子で,このTFに血中のⅦ因子が特異的に結合することで,図2に示す凝固反応系のカスケードが駆動される.
最近,血中にTFの"遊離型"が存在することが明らかになり,血中TFを病態マーカーにしたDICなどの凝血疾患の予知・診断が注目されていた.しかしながら,血中TFレベルは微量で,血中TFをアッセイするためにはpgレベルの測定が可能な高感度ELISAが必要であった.さらに,この高感度化によって血中TFが測定できたとしても,それがprocoag-ulant活性のない可溶性型(s-TF)か,あるいは強いprocoagulant活性を示す膜結合性型(m-TF)か,いずれのタイプであるか明らかでない.特に,種々の疾患では血中TFが顕著に増大する症例がみられるが,そのとき,s-TFならびにm-TFを簡便,迅速に測定することができれば,信頼度の高い凝血疾患の診断・予知が可能となる.
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