今月の主題 臨床検査とQOL
巻頭言
医療とQOL
後藤 由夫
1
Yoshio GOTO
1
1東北厚生年金病院
pp.1359-1360
発行日 1995年12月15日
Published Date 1995/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902759
- 有料閲覧
- 文献概要
1.医療とQOL
近年quality of life (QOL)という言葉が多くの分野で使われている.この言葉は,19世紀の産業革命のころ,英国の炭鉱労働者の生活環境の改善に関して使われたのが始まりと言われている.生命の質とか生活の質と訳され,中国語では生存質量と訳されているが,lifeそのものが広い意味を持っているのでQOLと言ってもその内容は言う人や分野によって違ったものになっている.したがって筆者は人生の充実度,生活の充実度,生活の満足度,幸福度,生きがいの度合いという言葉に置き換えたほうがわかりやすいと思っている.医療の分野で用いる場合には身体あるいは心身快適度というほうがわかりやすい.
生活の充実度や満足度は主観的なものなので,楽天的な人と悲観的で被害意識の強い人とでは異なり,また性格,境遇,環境によって左右されるが,一般には次のようなものの総和として感じられると思われる.その1つは健康で,体が健やかで心が康らかであること.しかし病気があったり体に欠陥があっても,その状態を受容し自分なりに納得していれば,それは生活の充実度を損う大きな要素とはならない.次には人間関係で,一緒に生活している家族や近隣の人,職場の人たちが自分をよく理解してくれ好意を持ってくれるかということ.そして生きがいとなることがあるか.自分の気に入った仕事があるか.生活基盤が安定しているか.自分が望んでいる生活を維持するだけの収入があるか.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.