今月の主題 糖尿病診療の現況
糖尿病の概念
後藤 由夫
1
Yoshio GOTO
1
1東北大学医学部・第3内科
pp.6-7
発行日 1981年1月10日
Published Date 1981/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216980
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分類と概念の変遷
古くから知られているありふれた疾患では,医学の進歩とともにその概念や分類が変わっていくのが通例であり,糖尿病はその代表的な疾患といえる,糖尿病と思われる多尿症はパピルスにも記されているという.Aretaeus(30〜90AD)は,激しい口渇と多尿があり,痩せ衰えて遂には死に至る病人を観察し,この病気をdiabetesと呼んだ.これは流れ去るという意味の言葉だそうである.したがってdiabetesという言葉の内容は多尿症であり,Harnrrhoeという語が適切である.すなわちdiabetesは,はじめは糖尿と結びついて使われた用語ではないのである.
ヨーロッパ医学で蜜尿に気づいたのはThomas Willis(1621-75)で,その発見から約100年後にLinneの命名法に準じて,Cullenがdiabetesというギリシャ語にmellitusというラテン語の形容詞をつけて命名した.当時は糖の分析法もなく五感に頼って診断していたので,糖尿病は味覚により診断されたのであるが,やがて多尿がありながら甘味のないものが経験され,ここでdiabetesはmellitusとinsipidusとに分類されることになった.
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