目でみる症例―検査結果から病態診断へ・35
糖尿病患者に伴った上顎洞ムコール症
岩 信造
1
,
片山 善章
2
Nobuzo IWA
1
,
Yoshiaki KATAYAMA
2
1国立明石病院研究検査科
2国立循環器病センター臨床検査部
pp.1331-1333
発行日 1995年11月15日
Published Date 1995/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902750
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検査結果の判定
図1は患者の入院時に悪臭を伴った鼻腔の黒色の痂皮から綿棒で擦過し,グラム染色を行ったものである.多数の細菌を背景に一直線上に延びた菌糸から直角に分枝した菌糸を認める.また,図2は同時にパパニコロウ染色を行ったものである.壊死背景の中に多数の多核白血球および細菌が出現し,核線も見られる.その中にリボン状で,菌糸の幅は5μmから15μmまであり,菲薄で,オレンジGあるいはエオジンの色素に染まる部分とこれらの色素に染まらない部分も見られる.また,幅の広い無隔性の菌糸に対し,直角状の分枝が認められる.
入院時の真菌培義の検査では白色でクモの巣状の外観を呈するコロニーを認め,コットン青染色を行うと幅広い無隔性の菌糸に仮根が認められた.その部位から単枝状の胞子嚢子板が伸び,先端に球形で柱軸を持つ胞子裏の形成がみられ,Mucor Rhizopusを分離同定し得た(図3).
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