特集 免疫組織・細胞化学検査
臓器別応用例
6.神経系
3)変性疾患
小林 槇雄
1
Makio KOBAYASHI
1
1東京女子医科大学第一病理学教室
pp.231-234
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902721
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はじめに
変性疾患とは,神経細胞の萎縮,変性による進行性の障害で,末期には非可逆的な脳脊髄の萎縮をもたらす神経難病である.原因のいまだ不明のものが多いが,運動ニューロンを選択的に障害する難治性神経筋疾患である筋萎縮性側索硬化症では,脊髄後索の変性を伴う遺伝性症例の一部で原因遺伝子としてCu/Znsuperoxide dismutase(SOD)遺伝子の突然変異が相次いで報告され,病因との関連が注目されている.
臨床的に進行性の痴呆を主症状とするアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)の脳では,大脳皮質全般にわたる神経原線維変化と老人斑を病理学的特徴としている.これら病変の帰結が,広範かつ選択的な神経細胞脱落であり,細胞脱落の程度は臨床上の痴呆の程度に最もよく相関する.また,海馬CA 1の錐体細胞脱落は,同部位の神経原線維変化とよく相関し,画像解析によると,連合野皮質のIII,V層の錐体細胞が選択的に脱落を示す.細胞間隙に形成される老人斑は,ADに特異性が高く,中央にアミロイドと呼ぶ線維状構造物が集積した芯を持ち,その周囲に変性した神経突起やシナプスが存在する.この構造物の特徴から,アミロイド線維が脳の細胞間隙に沈着して,周囲の神経突起を変性させ,ついにはニューロンを死に至らしめるものと推定されている.
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