特集 免疫組織・細胞化学検査
抗原の種類による応用例
5.複合糖質抗原
塚崎 克己
1
,
久布白 兼行
1
,
福地 剛
1
,
野澤 志朗
1
Katsumi TSUKAZAKI
1
,
Kaneyuki KUBUSHIRO
1
,
Tsuyoshi FUKUCHI
1
,
Shiro NOZAWA
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.109-112
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902684
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はじめに
細胞の表面は図1に示すように二重の脂質膜に覆われており,この二重膜のところどころに埋め込まれた蛋白質や脂質の一種であるセラミドには糖鎖が結合し,おのおの糖蛋白質,糖脂質を構成している.そしてこの両者を総称して複合糖質と呼んでいる.最近,癌細胞では細胞表面の複合糖質,特にその糖鎖部分の構造が変化し,正常細胞では存在しないような種類の糖鎖が出現してくる,すなわち糖鎖の発現異常が起こることが明らかとなった1,2).また,複合糖質の糖鎖部分は,細胞の形態や組織構築,細胞相互の認識などにも必須な構造的基盤を与えており3),さらに近年,癌細胞における細胞表面の糖鎖が,浸潤や転移など,癌細胞の細胞生物学的特性に影響を与えることが明らかになったことから4),複合糖質に関する研究は多くの領域において,きわめて重要なテーマとなってきた.そして,個々の組織や細胞レベルでの複合糖質の発現や分布をin situで明らかにしたり,実際に細胞間相互作用が引き起こされている現場で可視化したりするための免疫組織化学的手法は今や複合糖質研究において必要不可欠のものとなっている5).
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