特集 免疫組織・細胞化学検査
抗原の種類による応用例
4.細胞接着因子
石井 源一郎
1
,
張ケ谷 健一
1
Gen-ichiro ISHII
1
,
Ken-ichi HARIGAYA
1
1千葉大学医学部第1病理学教室
pp.103-107
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902682
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はじめに
個体の発生・分化の際に,あるいは細胞の局所への遊走の際に,細胞同士を互いに接着させる現象は,生体の有機的かつ機能的な連絡にとって必須の現象である.この接着現象を仲介する分子は,接着分子と呼ばれている.すなわち,接着分子は,細胞―細胞,細胞上細胞外マトリックス間の接着を仲介し,局所における微小環境構成の一因子として機能を有している.しかしながら,近年におけるさまざまな研究から,接着分子は,個体の発生・分化・成熟といった正常な生理学的現象のみならず,悪性腫瘍の浸潤・転移においても,きわめて重要な役割を果たしていることが想定されている.また,接着分子は,細胞接着のための単なる"糊"として機能するばかりでなく,細胞内外の情報伝達に関して重要な機能を有していることも判明してきている.
個体の発生・分化・成熟に関する接着分子の果たす役割については他書に譲り,本稿では臨床的に遭遇することの多い悪性腫瘍の浸潤・転移における役割について概説する.
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