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Sandhoff病は,リソソームに存在する糖質加水分解酵素であるβ-ヘキソサミニダーゼ(Hex)のβ-サブユニットをコードするHEXB遺伝子の変異が原因で発症する常染色体劣性遺伝病である1)。Hexは複合糖質糖鎖の非還元末端にβ結合したN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)あるいはN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基を認識して分解する。 また, Hexはαおよびβの二つのサブユニットから構成され,HexS(αα),HexA(αβ)およびHexB(ββ)の三つのアイソザイムが存在する(図1)。生体内ではおもにHexAとHexBが発現しており,HexSはその不安定性のため存在量は少ない。αおよびβサブユニットには各々基質選択性の異なる触媒部位が1ヵ所ずつ存在するが,βが中性糖鎖を認識するのに対し,αは硫酸化GlcNAc残基などを含む酸性糖鎖に対する選択性が高い。また,HexAのみが糖脂質であるGM2ガングリオシド(GM2)をそのGM2活性化タンパク質と協同して分解することができる1,2)。
Sandhoff病では,HexAおよびHexBが同時に欠損するため,GM2をはじめとする糖脂質や非還元末端にGlcNAc残基を含有する糖タンパク質糖鎖などの基質がリソソーム内に過剰蓄積する。これらの蓄積は全身で進行性に起こり,精神運動発達遅滞,痙攣や四肢麻痺などの中枢神経症状や,末梢では肝脾腫などの症状が現れる1)。一方,α-サブユニット遺伝子(HEXA)の変異に基きHexAおよびHexSの同時欠損を伴うTay-Sachs病や,GM2活性化タンパク質遺伝子(GM2A)の変異に基くABバリアントでは, GM2の脳内過剰蓄積を伴い,主として中枢神経症状が発症する1,2)。しかしこれらのGM2蓄積症(GM2 gangliosidoses)の発症メカニズムについては依然として不明な部分が多い。
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