ミニ情報
細胞標本免疫染色のための保存方法
社本 幹博
1
1藤田保健衛生大学総合医科学研究所病態細胞学研究部門
pp.34
発行日 1995年10月30日
Published Date 1995/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902657
- 有料閲覧
- 文献概要
細胞診標本をしばらく保存する必要がある場合の保存方法について,未固定標本と固定標本とに分けて述べる.未固定標本については十分に乾燥固定後シリカゲルを入れた完全に密封可能な容器に入れ保管する.-80℃の冷凍保存であれば1年ぐらいは保存できる.-20℃でも2~3か月は十分に保存可能である.通常の冷蔵庫では1~2日しか持たない.いずれにしろ未固定標本であるので完全に密封して保管することが重要である.固定標本の場合はアセトン固定後乾燥して上記の方法で保存できる.冷蔵庫内保存も未固定標本よりは長期間保存が可能である.アルコールや10%ホルマリン固定の場合には固定液に入れたまま保存することになるので,固定時間が長くなると細胞内物質の溶出などのため,抗原性の失活の原因となる.したがって長期間の保存は好ましくない.もちろんアセトン固定やアルコール固定では免疫染色が不可能な抗体もあるので注意を要する.染色時-80℃から室温に戻すときには,-20℃,4℃と徐々に温度を上げてゆき室温に戻し再度風乾する.急激に室温中に取り出し標本上に水滴などが付くことがないよう注意する.同一症例で数枚の標本を作製し,その一部の標本のみを免疫染色し,他の未染色標本は別の機会に染色したいような場合には,初めから別の容器に分けて保存するよう心がける.何度も保存標本を室温に戻すことは避けるべきである.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.