今月の主題 血液疾患をめぐる新しい検査
話題
アポプトーシス
吉田 弥太郎
1
Yataro YOSHIDA
1
1京都大学医学部第一内科講座
キーワード:
アポプトーシス
,
programmed cell death
,
内因性ヌクレアーゼ
Keyword:
アポプトーシス
,
programmed cell death
,
内因性ヌクレアーゼ
pp.1240-1241
発行日 1993年11月15日
Published Date 1993/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901802
- 有料閲覧
- 文献概要
1.はじめに
細胞の死滅は無秩序な崩壊現象と考えられやすく,細胞増殖に比べると研究対象にはなりにくかった.細胞死には壊死とアポプトーシスとの2種類がある.古典的な細胞死すなわち壊死は,ミトコンドリアの膨化,細胞の膨化とcell densityの低下,細胞膜の破壊による細胞崩壊である.壊死に対立する第2の細胞死アポプトーシスは,プログラムされた生理的な細胞死である.例えば,老化・変性した細胞,損傷を受けた細胞などは,生体にとって不必要なものであり,排除される運命にある.このような生理的細胞死を,木の葉の落葉を意味する"apoptosis"ということばで表現する.綴りの2番目のpは発音しないと原著1)に記されているが,欧米人の間ではどちらも通用している.
最近の生命科学用語として,アポプトーシスほど話題を独占しているものはなかろう.主要な海外雑誌がこぞってアポプトーシスの総説を載せているし,単行本2)もある.癌学会,血液学会などでもアポプトーシスのセッションが登場した.発生学,免疫,血液,内分泌,腫瘍,神経系など,実に広汎な領域でアポプトーシスが研究対象となっている.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.