今月の主題 白血病—最新の知見と治療
特殊な白血病
Myelodysplastic syndrome(MDS)と周辺疾患
吉田 弥太郎
1
1京都大学医学部・第1内科
pp.604-605
発行日 1990年4月10日
Published Date 1990/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909522
- 有料閲覧
- 文献概要
MDSは,原発性に骨髄や末梢血の血球形態の異常(異形成)があって,有効な血球の産生が行われない状態である.骨髄は原則として細胞成分に富んでいるが,末梢血は血球減少を示す.つまり単純な骨髄低形成による血球減少ではなく,無効造血であるとされる所似である.貧血などの血球減少は治療に反応しにくい(不応性貧血ないし不応性血球減少).またMDSは前白血病的性格もあり,しばしば急性白血病へと進展する.異形成と総称される形態異常は,血球分化過程の欠陥を反映するものと考えられ,機能面でも赤血球,白血球,血小板などの機能低下がある(表).血球産生,形態,分化と機能などの異常は,しばしば複数の血球系にみられるので,MDSの本態は多能性造血幹細胞の異常であろう.
臨床的特徴は,中・高年齢者に多発し,慢性かつ不可逆性に経過し,急性白血病化と骨髄不全(感染や出血)をきたすことである.このようなMDSの概念は,一方では不応性貧血,他方では急性白血病とのそれぞれの境界域を明確にする目的で生まれたものである1).しかし症例の集積によってMDSの不均質性が明らかにされるとともに,周辺疾患との鑑別の困難さも指摘されている.ここでは代表的な周辺疾患との異同を論じたい.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.