特集 遺伝と臨床検査
IV HLAタイピング
3.DNAを用いる方法
狩野 恭一
1
Kyoichi KANO
1
1オリンパス光学(株)バイオメディカルリサーチセンター
pp.211-217
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901309
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過去30年間に臓器・細胞移植は劇的な発展を遂げた.特に1980年代の新しい免疫抑制剤であるシクロスポリンAは従来の腎移植のみならず,一時中止状態にあった心・肝移植や骨髄移植の例数を飛躍的に増加させた.正に臨床移植のルネサンス期に入ったと言えよう.こうした臨床の成果を支える柱として主要組織適合検査,すなわちHLAの同定とマッチングの技術も著しい進歩を遂げた.特に分子生物学的アプローチは過半数のHLAクラスI遺伝子,大半のクラスII遺伝子の一次構造を決めるに至った.恐らく今後2~3年の間にすべてのHLA遺伝子の一次構造が決められるであろう.
すでに前項「抗体を用いる方法」で詳しく述べられたように,分子生物学的アプローチは血清学的に同定が困難なHLAクラスII抗原の同定に威力を発揮してきた.現在,DNAを用いたHLAタイピングはクラスII抗原の特異性の確認と1つの特異性を,さらに細分するサブスペシフィシティの研究に用いられている.したがって本稿では,まずHLAクラスIIタイピングの古典的方法である.細胞性タイピングについて解説し,これとの対比においてDNAタイピングについて述べてみたい.
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