特集 遺伝と臨床検査
III 染色体異常の診断
2.末梢血の各種染色体分染法
2)ギムザ染色によるR分染
家島 厚
1
,
頼田 多恵子
2
Atsushi IESHIMA
1
,
Taeko YORITA
2
1鳥取県立皆生小児療育センター小児科
2鳥取大学医学部脳神経小児科
pp.131-136
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901294
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染色体検査は臨床医学の中でルーチン検査として定着し,外注検査として日本中どこの病院からでも検査可能となった.医学教育や卒後教育の中で,臨床遺伝学の教育が必ずしも十分でないところで,染色体検査だけが,一般に普及し,結果の説明,染色体異常児のフォローが不十分のままで終わっている例が残念ながら多いようである.
本邦では,G分染法が最も普及し,R分染法は一般にはなじみがない.R分染法は,G分染法の染色と白黒逆の染色となることから命名された分染法であり,reverse bandに由来している.1971年Dutrillauxら1)の報告に始まり,現在でもフランスを中心に行われているが,本邦では一般に行われていない.Gバンドでは蛍光顕微鏡を必要とせず,鮮明なバンドが得られるのに対し,Rバンドでは,一般に蛍光顕徴鏡を必要とし,Gバンドよりバンドが不鮮明であることがこの理由と考えられる.しかし,ギムザR分染法では蛍光顕微鏡を必要とせず,Gバンド同様の鮮明な永久標本が得られる.Rバンドは単純なGバンドの裏返しではなく,Gバンドで弱点となるGバンドのwhite bandに濃淡を持ったバンドが得られ,Gバンドと相補的な関係にある.染色体異常の切断点決定などバンドの微妙な部分を決定する場合に,高精度分染法でより細かく観察することも大切であるが,Gバンドと併用してRバンドを検討することも大切である.
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