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はじめに
C型慢性肝疾患は,インターフェロン(interferon:IFN)をベースとした治療を行っていた時代から,C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)が排除されるウイルス学的著効(sustained virological response:SVR)と肝発癌が抑制されるという多くの報告があり,国家公務員共済組合連合会虎の門病院(以下,当院)でも,C型慢性肝疾患の10年累積肝発癌率は,無治療群で12.0%,IFN治療無効群で15.0%であったのに対し,SVR群は1.5%と有意に肝発癌リスクが抑制されたと報告した1).2014年にわが国で初めて直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAAs)を用いたIFNフリー治療が認可されてから,それまでIFNによる治療は不耐容とされていた高齢者や肝線維化高度進行症例,さらには肝癌治療後の症例に対しても広く抗ウイルス治療が行えるようになり,100%に近い症例でSVRを得られるようになった.IFNフリーDAAs治療開始より5年以上が経過し,DAAs治療によるSVR達成も肝発癌抑制効果があるという報告も集積され,コンセンサスが得られてきている.一方で,IFN時代よりSVRが得られてからも肝癌を発症する症例は一定数みられ,SVR後5年以上の長期経過後に肝発癌を認める症例を経験する.このように,ウイルス排除後も長期にわたり肝発癌リスクは完全には消失せず,post-SVRの時代として,肝発癌リスク因子を同定し,肝発癌のサーベイランスをどのように行っていくかを検討することが重要となる.
本稿では,SVR後の肝発癌リスク因子と肝発癌リスクの層別化について,自験例や文献的考察を交えて概説する.
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