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NAFLD/NASH
肝臓は生理的に1%程度の脂質を含有するが,脂肪肝は“肝組織中の脂質(中性脂肪)が5%を超えた状態”と定義される.脂肪肝の成因はアルコール性と非アルコール性に大別され,日本肝臓学会の「NASH・NAFLDの診療ガイド2021」1)によれば,エタノール換算で60g/日以上の飲酒を伴う脂肪肝はアルコール性,ほとんど飲酒をしない場合(30g/日未満:男性,20g/日未満:女性)を非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)とされる.NAFLDはさらに,病態がすぐには進行しない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)と,肝硬変や肝癌へと進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に分類される(図1).
従来,アルコール性でない脂肪肝は病態が進行しないと考えられていた.しかし1980年台にMayo Clinicの肝臓病理医であるLudwigら2)は脂肪肝炎と診断される症例のなかに非飲酒者が含まれることを指摘し,さらに1986年にSchaffnerら3)は飲酒歴がないにもかかわらずアルコール性肝障害に類似した肝組織像を示す病態としてNAFLDの概念を提唱した.その後1999年にMatteoniら4)が,過剰な飲酒歴のない脂肪肝患者を肝組織の病理学的所見に基づき以下の4つに分類した〔type 1:脂肪化のみ,type 2:脂肪化と炎症細胞浸潤,type 3:脂肪化と肝細胞風船様変性(ballooning),type 4:脂肪化と肝細胞風船様変性に加えMallory-Denk体あるいは線維化〕.ballooningは肝細胞の高度障害による形態変化で,特にNASHに特徴的な所見とされる.Matteoni分類のtype 3,4の症例,すなわちballooningや線維化を伴う脂肪肝は肝硬変や肝関連死の発生が高頻度であることが明らかとなっており,これらはNAFLDのなかでも進行性の病態のNASHと総称されるようになった.
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