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はじめに
わが国におけるウイルス性肝癌のうち10〜15%がB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)由来のものである.一方B型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療はインターフェロン製剤または核酸アナログ製剤を使用した治療が標準治療となっている.核酸アナログ製剤は2000年にラミブジン(lamivudine:LAM)が認可になったが,導入当初より耐性ウイルス出現頻度が高いことが問題となっていた.そこでLAM耐性出現症例に対して2004年にアデフォビル(adefovir:ADV)が認可となった.さらに2006年にはエンテカビル(entecavir:ETV)が認可となった.ETVは薬剤耐性出現頻度が非常に低く,抗ウイルス効果も良好なため,長期間にわたり核酸アナログ製剤の標準治療薬であった.2014年にはETV同様に耐性ウイルス出現頻度が極めてまれで,抗ウイルス効果の強力なテノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(tenofovir disoproxil:TDF)も認可され,薬剤耐性ウイルスに苦慮する場面はほとんどなくなった.2016年末にはTDFの全身曝露量を低下させながら,薬効成分を肝細胞へ効率よく移行するように改良されたTDFのプロドラッグであるテノホビル・アラフェナミドフマル酸塩(tenofovir alafenamide:TAF)が承認され,現在の標準治療薬として広く使用されている.
これらの抗ウイルス療法によりHBV増殖が抑制され,それに伴い肝機能が改善されることは周知の事実であり,それにより肝発癌のリスクは低減されるが,必ずしもなくなるわけではない1).また肝発癌リスクの低減を達成するためには,抗ウイルス療法未治療症例の発癌リスク評価が重要である.
そこで本稿ではB型慢性肝炎抗ウイルス療法未治療例の肝癌リスク評価と抗ウイルス治療後,特に核酸アナログ製剤投与例に対する肝癌リスク評価とを分けて,自験例や文献的考察を交えながら解説する.
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