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はじめに
患者を診察する際,採血検査の結果で急な肝酵素上昇を認めた場合には,異常の程度(現在の重症度の判定)と原因を究明し治療の内容が決定される.肝臓の働きには糖,タンパク,脂質,金属,薬剤などの代謝や胆汁の産生などがあり,まずこれらになんらかの障害が起こった場合を想定する.しかし,筋肉の挫滅によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase:AST)の上昇や,血液の溶血時のビリルビンの上昇などの例もあり,採血結果の異常が全て肝臓の機能障害ではないことも理解する必要がある.そのため,複数の検査項目により総合的に評価を行うことが日常診療では求められる.
AST,アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase:ALT)に代表される逸脱酵素は肝細胞が破壊されることにより上昇し,γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-glutamyl transpeptidase:γGTP)やアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)に代表される胆道系酵素は胆汁のうっ滞により上昇する.また,プロトロンビン時間やアルブミン値などのタンパク合成能は肝予備能を反映している.これらとほぼ同時に原因検索としてのウイルス学的な検査や免疫学的検査,さらには腫瘍マーカーなどの検査項目を追加し評価する.これらの採血結果は初診時に全て出そろうわけではなく.また,一時点での評価ではなく複数の時点の経過観察によりその重症度が把握できる症例もある.
この診療体系のなかでの画像診断の役割は原因の究明と重症度判定であるが,受診からなるべく早い時期に行うことで不必要な検査を省略し,早く正しい診断に到達することが可能となり,医療経済的にも有用であると考えられる.通常施行される画像診断として,超音波検査,CT検査,MRI検査が挙げられる.肝臓は人体最大の実質臓器であり他臓器も含めた1視野での全体像の評価などには,CT検査,MRI検査が有効であるが,外来で対象者を選別することなく触診と同様の感覚で簡便に施行できるという点が超音波検査の長所である.また,超音波検査は非侵襲的な検査法のため,経過観察や治療効果判定など複数回の検査が可能な点においても優れている.しかし,一方でCT検査,MRI検査などと比較すると客観性に乏しく,有効に使用されていないことも推測されるが,近年装置の改良により超音波検査の客観性も飛躍的に上昇している.そこで,本稿では急な肝酵素上昇がみられた際に超音波検査を活用法できるように,観察の意義と描出のポイントについて解説する.
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