増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック
Ⅴ 腎疾患
疾患の解説
膜性腎症
鷲田 直輝
1
,
葛西 貴広
1
1国際医療福祉大学医学部腎臓内科学講座
pp.482-483
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201572
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病態
膜性腎症(membranous nephropathy:MN)の臨床像としては成人の高度の蛋白尿を特徴とする.IgA腎症と異なり,肉眼的血尿を呈することはまれである.浮腫(下腿や眼瞼など),体重増加などを自覚することで発見される.高血圧を合併することは比較的少ない.進行は緩徐に進むことが多く,自然寛解することもあるとされ,症状がはっきりしないことも多い.そのため,成人健診で初めて蛋白尿を指摘され,診断に至ることもある.中年以降に発症するネフローゼ症候群のなかでは最も頻度が高く(約30%),ステロイド抵抗性を示すことが多い.
MNとは,組織学的に診断されるもので,糸球体係蹄壁が肥厚していることが特徴である.これは何らかの抗原が糸球体基底膜を通過して上皮側にとどまり,これに対する特異的抗体が結合することで,抗原抗体反応物が顆粒状に上皮細胞下に沈着すると考えられている.MNには,原発性と,他疾患に合併する二次性がある.原発性の70%以上が内因性抗原であるphospholipase A2 receptor(PLA2R)に対するIgG4型抗体により発症することが解明された1).二次性の原因としては悪性腫瘍,自己免疫疾患や感染症,薬剤性などがある.
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