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私は子どものころから鉄道が好きで,愛読書はJTBの時刻表であった.時刻表の欄外コラムはトリビア情報に富んでいて楽しかったし,難読駅名を知って地理の勉強にもなった.“特牛”,“雑餉隈”,“石動”などが読める読者は私と同好の士である.JRの“雑餉隈”は他地域の人には読めないということで“南福岡”に改称されたが,個人的な思いとしては余計なお世話であった.残念である.鉄道に絡む冗談としては,北海道の岩内駅で“ここはどこか?”と駅員に尋ねても“いわない(言わない)”と返されるとか,東北本線の沼宮内駅で駅弁が売れない理由は,構内放送で“うまくない!”とやるからだなどは,この筋の話の定番であった.最近の状況は知らないが,かつて東海道新幹線の東京到着前の車内放送では“房総特急ご利用のお客さまは……”とやっていた.これなども“暴走特急かい?”と笑いネタであった.千葉県を走る新京成電鉄の駅は“北習志野”よりも“習志野北”にすればよかったのにと思うが,住民の皆さまに不都合がないのなら,よそ者が口を挟むことでもない.ともかく,耳から入る言葉が,時にとんでもない解釈につながるという話である.
ことは寄生虫の話である.職場には一般の方からの相談電話もあることは本連載で何度かご紹介した.今回もそのエピソードである.研究室に中年男性からの電話があった.いわく“ネコヲナマデタベマシタガ,キセイチュウノカノウセイヲカンガエナクテハナラナイトイワレマシタ.ドウシタラヨイデスカ?”.電話を受けたのは西日本出身の畏友・K先生で,ビックリした彼は“あなた,ネコを食ったの?”と大声で返したものだから,職場の面々は目が点になってしまった.“普通ネコは食わないでしょう? しかも生で?!”とK先生も幾分パニック状態である.一方で相談者は“ネコデハナク,ネコデスヨ!”と,会話が一向にかみ合わない.聞き耳を立てていた同僚一同は笑いを必死でかみ殺している.そのうちに上司が“キミ,代わろうか”とK先生から受話器を取って,もう一度初めから話を確認しはじめた結果,ことの解決には1分もかからなかった.“ネコヲナマデタベタ(ネコを生で食べた)”のではなく,“ニクヲナマデタベタ(肉を生で食べた)”という相談だったのである.相談電話の主は東北地方の出身だったようで,訛りが幾分強かったようである.
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