寄生虫屋が語るよもやま話・9
必要なのは“鉄の肝臓”—寄生虫症のフィールドワーク
太田 伸生
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1東京医科歯科大学大学院・国際環境寄生虫病学分野
pp.1030-1031
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200943
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今回は寄生虫屋の研究現場を少しだけ紹介したいと思う.寄生虫屋には“昔の昆虫少年”が多いと以前に書いた.野原を駆け回って寄生虫をみつけるだけで幸せだというやからは確実に多い.しかし,寄生虫学も自然科学の端くれであるべきだと,結構真剣に試験管を振る連中も増えてきている.それでも,そんな実験研究者を寄生虫病の流行地に連れ出すと,“現場”の魅力に取り付かれてしまう者も少なくないなど,フィールドワークには不思議な魔力がある.
私は大学院で人類遺伝学を勉強し,将来はいっぱしの遺伝学研究者として身を立てようと思っていた.ところが,あるとき,恩師から日本住血吸虫症のフィールドワークに行ってこいと命じられ,出掛けたのが人生の転機であった.そんな経緯もあって,自分では屋外6割/実験室内4割の寄生虫屋と自己評価している.
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