カラーグラフ 感染症グローバリゼーション(最終回)
系状虫症(バンクロフト糸状虫症,マレー糸状虫症,回旋糸状虫症,イヌ糸状虫症について)
西山 利正
1,2
,
神田 靖士
1,2
1奈良県立医科大学寄生虫学教室
2奈良県海外渡航者健康相談事務局
pp.749-755
発行日 1998年4月10日
Published Date 1998/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909332
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糸状虫(フィラリア)は吸血昆虫媒介性寄生虫で,成虫は脊椎動物のリンパ系,血管系,皮下などに寄生する.雌成虫は卵胎生で一般的に仔虫(ミクロフィラリア,microfilaria)を産出し,それが再び媒介昆虫(vector)の固有宿主吸血時に取り込まれ,媒介昆虫内で発育し感染幼虫となる.そして媒介昆虫の固有宿主吸血の際にその昆虫の吻より再び出現し,経皮的に感染する(図1).ヒトに寄生する糸状虫は,バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti),マレー糸状虫(Brngia malayi),常在糸状虫(Mansonella perstans),回旋糸状虫(Onchocerca volvulus),ロア糸状虫(Loa loa)などが知られている.これら糸状虫は,世界的な温暖化傾向,治水灌概工事,砂漠の緑化などによってその媒介昆虫が増加していることから,今後注目しなければならない寄生虫である.
現在わが国では,従来分布していたバンクロフト糸状虫,マレー糸状虫はほぼ撲滅され,これらによる急性期の糸状虫症はほとんど見ることはなくなってきた.ところが最近,画像診断の発達により,ヒトにその幼虫移行症を発症する病原寄生虫としてイヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)が報告され,注目を集めている.今回これらの疾患の中で,バンクロフト糸状虫,マレー糸状虫,回旋糸状虫,イヌ糸状虫による感染症について取り上げることとする.
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