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1.はじめに
生体が刺激を受けると,細胞膜リン脂質よりアラキドン酸が放出され,シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase;COX)と各合成酵素によりプロスタノイドと呼ばれるプロスタグランジン(prostaglandin;PG)D2,PGE2,PGF2α,PGI2やトロンボキサン(thromboxane;TX)A2に変換される.また,アラキドン酸は,5-リポキシゲナーゼ(5-lipoxygenase;5-LO),ロイコトリエン(leukotriene;LT)A4 hydrolase,LTC4合成酵素などによりLTB4やシステニル(cysteinyl;cys)LTであるLTC4,LTD4,LTE4にも変換される.さらに,スフィンゴシン-1-リン酸(sphingosine-1-phosphate;S1P)やリポキシン,血小板活性化因子なども脂質メディエーターの1つである.
これらは一般に,細胞表面上に発現しているそれぞれ特異的なG蛋白結合型受容体を介して,その生理的役割を発揮する(表1).脂質メディエーターの受容体は様々な免疫担当細胞に発現しており,それらの免疫系への役割が様々な薬理学的研究から示唆されていた.しかし脂質メディエーターは一般に生理条件下での半減期が短く,生理的機能解析が非常に困難であったため,その役割の詳細は不明であった.近年これらの合成酵素や受容体の遺伝子改変マウスや選択的アゴニスト,アンタゴニストの開発により,免疫・アレルギーにおける生理的病態的役割が明らかになりつつある(表2)1,2).
以下,本稿では,プロスタノイドの役割を中心に,喘息,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD,note参照)などのアレルギー疾患における脂質メディエーターの役割の最新の知見を紹介する.
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