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疾病の発症に関与する要因に生活習慣要因,環境的要因,そして遺伝的要因がある.生活習慣病は遺伝的に糖尿病,高脂血症,高血圧症,肥満になる要因をもっていても全く健康であるが,それに食事,運動,喫煙,飲酒などの要因が加わって病気が発症する.遺伝的要因を有する患者に対しては生活習慣改善,環境要因への曝露を極力避けることによって有効な予防対策がとれる.遺伝的要因とは遺伝病ほどではないですが,ほかの人に比べれば病気になりやすいと言える遺伝的素因と言われてきたことである.例えば,その遺伝的素因は喫煙などの特定の生活習慣をしている人に対して影響力が強いということもわかってきた.このような遺伝的素因の多くは遺伝子多型によるものであると考えられている.すなわち,ある集団でDNA配列の変異が1%以上生じており,しかもその集団の多数のヒトと異なる場合をいい,生物機能に何ら影響を与えず遺伝マーカーになるだけのものから,疾患の原因や易罹病性に関係のあるものまで様々である.
遺伝的素因と喫煙,飲酒ことについて話題を少し述べる.タバコを吸うと誰でも癌になりやすくなるが,特定の遺伝子多型の型をもった人では,特になりやすいということがわかってきた.どうしてタバコを吸うようになるのか.どうしてタバコを止めることができないのか.本人の意志が大きな決定要素ではあるが,特定の遺伝子型をもった人に喫煙者が多いということがわかってきた.また,アルコールを飲むと少量で胸がドキドキし気分が悪くなる人がいる.このような人のアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の遺伝子はグアニンがアデニンに置き換わり,ALDH2の487番目のグルタミン酸がリジンに置き換わっているからであると言われている.日本人では20人に1人ぐらいがリジンのホモの遺伝子型をもっていて,お酒が飲めないことがわかっている.
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