Coffee Break
北大時代の学長に“進藤英太郎君”と呼ばれたS.K.君の想い出
佐々木 禎一
1
1元札幌医科大学附属病院検査部
pp.1144
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102093
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今回はその昔,北大理学部化学科で同期であったS.K.君に関するエピソードを紹介しようと思う.札幌出身の彼とは予科時代から一緒であったが,利発であるがゆえ峻烈な棘のある発言が多かったためか,よく口喧嘩もした仲であった.彼は小柄で外観は子どもっぽく,日頃大き目の靴を履いて歩くと,当時米国から輸入されていた新着のDisney映画の主人公ミッキーマウスに何となく似ており,私は彼に「新着漫画」という愛称を与えた.
当時の北大学長は理化学化学科の杉之目教授であった.この学長はユニークで何かにつけて行動派で,有機化学の分野での業績も多く,特にトリカブトなどの毒性alkaloidの研究は有名であった.札幌市の南区に立派な洋風邸宅を持ち,当時珍しかった集中暖房や水洗トイレも完備していた.また学生には気軽に声を掛けるが,急に有機化学に関する質問も飛び出し,学生のわれわれには時として脅威でもあった.当時頻回に行われていた「化学雑誌会」(新しい文献や自分の実験データを発表し,教授以下全員で質疑応答をする)では,杉之目教授は階段教室の一番前の席に座り次々と意見や質問を述べ,時折大きな声で“good !”などと発言する.また講義ではドイツ語と英語を混えて使用することが多かった.
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