今月の主題 漢方薬・生薬と臨床検査
トピックス
漢方の効き目を決める「証」の解析
櫻井 宏明
1
,
小泉 桂一
1
,
済木 育夫
1
Hiroaki SAKURAI
1
,
Keiichi KOIZUMI
1
,
Ikuo SAIKI
1
1富山大学・和漢医薬学総合研究所・病態生化学分野
キーワード:
証
,
プロテオミクス
,
バイオマーカー
Keyword:
証
,
プロテオミクス
,
バイオマーカー
pp.950-954
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102045
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1.はじめに
西洋医学的には,関節リウマチ,アレルギー,更年期障害といった病名診断に基づく治療が行われているが,漢方医学において,その治療効果をあげるための最も重要な指標は,東洋医学的な病態認識としての「証」である1).例えば,気虚,瘀血,水滞といった病態の診断が行われている.すなわち,本来の漢方治療を行うに当たっては,証に基づく診断は必須なものであり,その診断結果により治療の方針や漢方方剤が決定される(これを方証相対という).しかしながら,証診断には東洋医学の体系を熟知し,長年にわたる経験も必要とされることから,漢方の専門医でなければ診断は困難であると考えられる.西洋医学における血液生化学的検査のような,一般に広く普及した客観的な指標が東洋医学にはほとんどないことが“特別扱い”される大きな原因の1つであり,漢方医学の普及にとって障壁となっていると思われる.
われわれは,近年格段の進歩を遂げた西洋医学におけるプロテオミクス技術を東洋医学である漢方研究に応用し,証診断の客観的な指標となるバイオマーカーの探索を試みた(図1).本稿では,その概要について紹介する.
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