今月の本棚
—鈴木 秀郎著—「薬の効き目と副作用」
大西 昇
1
1大阪大学医学部附属病院
pp.495
発行日 1978年6月1日
Published Date 1978/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206571
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- 文献概要
副作用の問題を中心に薬とはなにかを明解に論述
副作用情報の必要性
薬の副作用による大きな社会問題の結果,副作用も情報システムの立場からかなり機能するようになってきた.しかし,薬の副作用を考える上で,まだ基本的な問題点が残されている.まず,副作用を研究するための動物実験の方法論が困難なため,副作用は人体に投与をはじめた時から,適格な収集と評価と伝達の作業を始あなければならない.この副作用情報システムの中でも,とくに重要なのが,発生する生データをいかに効率よく集め評価するかということで,この点,日本においては残念ながら非常に遅れている.
副作用を見つけることの難しさは本書にも述べているが,たとえばコラルジルによる肝障害では,発売後1年半で副作用が発生したにもかかわらず,それが本剤によるものであることが発見されるまでに数年以上もかかっており,その大きな原因として,同じ患者を血液学会と肝臓学会で違う病気として取りあげ,互いに気が付かなかったからであるとしている.これと類似の例として,眼科医ではよく知られており能書にも記されていたクロロキンの網膜症も,内科・小児科医がその重大さを知るまでに時間的なずれがあったということであり,このような情報のもれと偏在を防ぐために,副作用モニタリングシステムが必要である.ことに欧米で成果をあげている集中モニタリングが有用であるとされている.
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