今月の主題 食中毒
話題
フグ毒とその類縁体の微量分析法
山下 まり
1
Mari YAMASHITA
1
1東北大学大学院農学研究科
キーワード:
テトロドトキシン
,
フグ中毒
,
LC/MS
Keyword:
テトロドトキシン
,
フグ中毒
,
LC/MS
pp.707-711
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102000
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1.はじめに
フグ毒の本体はテトロドトキシン(tetrodotoxin;TTX)である.1983年に厚生省(現在の厚生労働省)環境衛生局長通知で,食用にできるフグの種類,部位,処理する方法が定められた.フグの取り扱い資格は各都道府県により異なるが,免許制度や講習制度を制定している自治体が多い.フグ中毒は,発生件数は多くないが死亡率は高く,2007年度では食中毒の全死亡者数の約半数である3名が死亡した.食中毒の原因となる自然毒としては,キノコと並んで最も危険な毒である.最近では2009年1月下旬に,山形県鶴岡市において飲食店で提供されたヒガンフグにより7名が発症し,2名が一時重体に陥る事件が発生した.また,同2月上旬に大分県由布市で違法に販売されたマフグの卵巣で2名が中毒した.
フグ中毒は,20~30分で発症し嘔吐などの症状の他に,くちびるや舌,手の感覚麻痺が起こり,重症になれば四肢の麻痺,呼吸困難に陥る.解毒剤はなく胃洗浄や呼吸の確保(人工呼吸),血圧の維持など対処療法が主な治療法である.致死量は,体重50kgの男性で1~2mgと推定されている.TTXは,神経や骨格筋の細胞膜に存在し神経情報伝達を担う電位依存性Na+チャネルに特異的に結合してNa+の細胞内流入を阻害し1),上記の症状を引き起こす.本稿では,TTXとその類縁体の微量分析法の概略について述べる.
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