論述
フグ毒に関する二,三の最近の知見について
小倉 保己
1
1千葉大学腐敗研究所食中毒研究所
pp.281-287
発行日 1958年8月15日
Published Date 1958/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906029
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フグの毒はcurare類似の骨骼筋麻痺作用をもつという大沢(1884)の極めて興味深い報告に始まり,最近における津田らのフグ毒の化学的研究とくにtetrodotoxinの結晶化に至る,約80年に及ぶフグ毒に関する研究は,フグが猛毒をもちながらも,われわれ日本人によって好んで賞味されているという特殊な事情によるだけでなく,そのフグのもつ毒自身の中毒学的,薬理学的作用に興味深いものがあり,またその食品衛生学的な観点からみた重要性によることをも物語っている。フグ毒に関する研究は,ほぼ第2次世界大戦以前にすでに可成りの程度に明らかにされていた。この点に関しては,すでに福田1)によって綜説されているし,私共もかってフグ毒に関する最近の進展をも含めて,フグ毒に関する未解決な諸点について綜説2)を試みたことがあるので,ここでは重複をさけて,私共の研究部において今迄に得られた諸成績,とくにフグ毒の作用機序を論ずる上に重要と思われる新しい事実と,それに基づくフグ毒の新しい定量法を中心に,二,三の関連ある事柄について私見を述べてみたいと考える。
フグ毒の研究を行うにあたつて,私共がまず考えたことは,フグ毒の生体反応を明らかにして行く上に必要な毒力の定量法を見出すことにあつた。
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