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先天性免疫不全症は,免疫系において重要な役割を果たしている分子の異常により,生体防御機構が低下し,易感染を呈する疾患である.近年,先天性免疫不全症の責任遺伝子が次々に同定されてきており,診断法の確立,生体防御機能低下のメカニズム解明,病態理解の進歩,よりよい治療法の選択に役立っている.こうした免疫不全症研究の進歩をもとに,International Union of Immunological Societies(IUIS)は,2年ごとに分類を改訂している.
しかし,免疫不全症の分類は難しい.例えば,遺伝子から分類するのか,臨床病態から分類するのかと言う問題がある.遺伝子名だけでは,実用性に欠ける分類となろう.例えば,高IgM症候群は責任遺伝子で分類することになった.これは,高IgM症候群は,原因遺伝子としてCD40 ligand(CD154),CD40,AID,UNGが知られているが,前2疾患は細胞性免疫不全と液性免疫不全をきたす複合型免疫不全症であるが,後2疾患は液性免疫不全であり,病態や治療法が異なるため,高IgM症候群と同一名称にした場合の混乱を避けるためである.また,高IgM症候群という名称でありながら,症例によっては血清IgMが高値をとらず正常値の場合がある.臨床医が免疫不全症患者を診療した際に,IgMが正常であることから高IgM症候群を鑑別診断から除外してしまい,診断を誤る可能性もある.これらのことから今回の分類では高IgM症候群という疾患名をなくし,遺伝子名を病名とすることとなった.しかし遺伝子名で分類することは,非専門医にとってわかりにくくなった側面もある.高IgM症候群という名称は歴史的にも長く使われており,概念的にわかりやすい.今後どのように分類するか工夫が必要である.
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