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はじめに
近年,ゲノム解析の進歩や遺伝学的検査技術の向上に伴い,診療の場における遺伝学的検査の需要は高まってきている.遺伝学的検査には遺伝性疾患を診断する目的で行われる遺伝子検査,染色体検査,蛋白質や代謝産物の測定などが含まれる.
一般に臨床で実施されている広義の遺伝子検査は大きく以下の3つに分けられるが,本稿の対象である「遺伝学的検査」に含まれるのは,③のみである.1)2)①の核酸検査と②の遺伝子検査は次世代へ受け継がれるという性質もなく,診療上も有効な情報となるため,通常行われている臨床検査の体制で対応できる.また,これらを対象とする研究においても本人へのインフォームド・コンセントが十分に行われることで混乱はないものと考えられる.
①細菌・ウイルスなどの外来性遺伝子の検出(核酸検査:nucleic acid-based testing).
②腫瘍組織など後天的に一部の体細胞に起こった遺伝子変異の検出(遺伝子検査:gene-based testing).
③体内のすべての細胞に共通で次世代へ受け継がれる生殖細胞系列に起こった遺伝子変異の同定(遺伝学的検査:genetic testing).
③を含め,遺伝学的検査においては,血縁者間で一部共有されており,次世代にも受け継がれる可能性があることから,本人だけでなく家族全体の問題になることが考えられる.疾患によっては発症前診断,出生前診断やそれを目的とした保因者診断ができるが,なかには治療法や予防法のない疾患の発症前診断,重篤という判断が難しい疾患の出生前診断,知る権利や知らない権利,遺伝学的検査実施の時期,代諾の問題など倫理的・法的・社会的諸問題(ethical, legal and social issues;ELSI)への対応に迫られる場面も多い.
詳細は個々のケースによるにせよ,多くの配慮が必要な生殖細胞系列の遺伝学的検査について,遺伝医療に携わる医療者・研究者が共通認識を持ち,検査が適切に行われるために,日本でもいくつかのガイドラインが作成された.遺伝学的検査に関連する内容を含む主要な4つについて紹介する.
また,遺伝学的検査の目的や被検者の状況によってインフォームド・コンセントの内容も異なり,対応が複雑になっている.ガイドラインにおけるインフォームド・コンセントと遺伝カウンセリングについての記述を最後にまとめたいと思う.
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