特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
4.遺伝子分析―リスクファクターの推定
コラム
痛風・高尿酸血症
谷口 敦夫
1
,
鎌谷 直之
1
1東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター
pp.1590
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101477
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
近年,日本において痛風・高尿酸血症が増加したのは,ライフスタイルの変化によるところが大きいと考えられている.しかし,痛風・高尿酸血症には遺伝子要因も関与する.尿酸は主に腎臓から排泄される.双生児を用いた研究で,尿酸クリアランスの遺伝率は60%(95%信頼区間40~100%),尿中尿酸排泄率の遺伝率は87%(95%信頼区間45~100%)と報告されており,尿酸の腎での動態には遺伝子要因の関与が大きい1).高尿酸血症は尿酸の産生過剰や排泄低下によって生じるが,痛風症例の高尿酸血症は尿酸排泄低下を基盤とすることが示されている.近位尿細管には尿酸の再吸収や分泌を担う分子が存在し,両者の分子の発現量の差により尿酸の輸送方向が決まってくると考えられている.したがって,痛風・高尿酸血症の遺伝子要因として,尿細管における尿酸輸送分子の遺伝子が重要である.URAT1は近位尿細管細胞刷子縁膜に存在する尿酸/有機アニオン交換輸送体で,尿酸の再吸収を行う主要なトランスポーターである2).われわれは最近,URAT1遺伝子(SLC22AR)のG774A変異が血清尿酸値を低下させる要因であるとともに,男性において痛風の発症を抑制する遺伝子要因であることを明らかにした3).今後,尿細管における尿酸動態の分子レベルでの解明が進むにつれて,痛風・高尿酸血症の遺伝子要因もさらに明らかになるのではないかと期待される.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.