- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
臨床的有用性
1.ヒトパピロマーウイルス(HPV)タイプの分類と感染病変
ヒトパピロマーウイルス(human papillomavirus;HPV)は現在,100タイプ以上が同定されており,そのうち40タイプ以上は,子宮頸部や腟,肛門,陰茎,咽頭,喉頭などの上皮に感染するために,粘膜型HPVと呼ばれている.パピローマウイルスは遺伝子配列の違いによって18の属に分類されるが,HPVはα,β,γ属の3つに分かれている.粘膜型はα属に属し,このグループには皮膚型のHPVも含まれている.ちなみにβ属には疣贅状表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis;EV)症や他の皮膚型HPV,γ属には皮膚型HPVが含まれる.EV誘発HPV型を除き,皮膚型HPVは癌を誘発しない.
HPVはE6,E7,E1,E2,L2,L1遺伝子の配列から分類され,その系統樹を図1に示す1).粘膜型のなかで,HPV6,11型などは腟や外陰部,肛門,陰茎に尖圭コンジローマを誘発し,これはほとんど癌化しないため低リスク型と呼ばれる.一方,HPV16型などは子宮頸癌から検出されるために高リスク型と呼ばれている.子宮頸癌で単独型感染として検出されるHPVタイプを高リスク型と定義し,HPV16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,73,82型の15タイプがそれに相当,さらにHPV26,53,66型の3タイプも高リスク型の疑いとされている(図1,表1)2).しかし,このなかでHPV45,HPV73は日本の子宮頸癌ではほとんど見つかっていないし,高リスク型疑いのHPV26,53,66型は高度子宮頸部上皮内新生物(cervical intraepithelial neoplasia;CIN)でも検出されていない3~5).一方,欧米では高リスク型とされていないHPV67,69型が日本の子宮頸部扁平上皮癌や高度CINから単独型として検出されている.したがって,これらも高リスク型であると考えられる(表1).粘膜型HPVのうち半数以上が低リスク型や高リスク型に分類されていないタイプ(リスク不明型)であるが,これらのタイプの多くは低リスク型であろうと考えられる.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.