特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査
1章 プロテオミクスの基礎
4. 蛋白質の翻訳後修飾の解析
川崎 博史
1
Hiroshi KAWASAKI
1
1横浜市立大学木原生物学研究所
pp.1233-1240
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101008
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はじめに
細胞で機能している蛋白質のほとんどすべてが何らかの修飾を受けている.翻訳後修飾を受けてはじめて本来の機能を発揮する蛋白質も多く,蛋白質の機能を理解するうえでも翻訳後修飾の解析は重要である.蛋白質のリン酸化のように可逆的で翻訳後修飾の状態によって蛋白質の機能が制御されているような場合は,翻訳後修飾の解析から細胞の状態を推定することも可能である.多くの生物種においてゲノムの全構造が明らかにされ,それによってコードされているすべての蛋白質のアミノ酸配列を手に入れることができた.蛋白質の翻訳後修飾は細胞の状態と密接に連関しており,これを解析することで細胞の働きを知ることができる.翻訳後修飾は,ほとんどの場合,修飾反応を触媒する酵素が存在する.翻訳後修飾の解析によってこの修飾酵素,例えば,蛋白質リン酸化酵素の制御系の活性化の状態についての情報を得ることができる.
本稿では,蛋白質のアミノ酸配列をもとに翻訳後修飾部位を推定するためのパターンとそのデータベースについて述べ,次に個々の蛋白質の修飾の検出法について解説した後,プロテオームの変動としての翻訳後修飾の解析や網羅的な解析法についてリン酸化を例にとって述べる.
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