特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査
序文
プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査
伊藤 喜久
1
Yoshihisa ITO
1
1旭川医科大学臨床検査医学
pp.1204-1205
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101004
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臨床蛋白質検査は臨床化学のsubspecialityで,電気泳動法や抗原抗体反応による質量濃度分析と,抗体活性,酵素活性に代表される機能評価などを主な方法論とする.一部病理形態検査も範疇におさめ,精度保証システムの充実と信頼性の高い測定分析システムの確立により,健常者,患者を対象に動態分析を行い,病態検査上の意義を追及してきた.
細胞内外のすべての蛋白質を網羅的に機能解析するプロテオミクスにより,臨床蛋白質検査は大きな夢と活性をもって新たに生まれ変わろうとしている.それはヒトゲノムの解読とポストゲノム研究の興隆により,生命活動の大部分を担うすべての蛋白質が一気にもたらされ,相互間作用も含めすべての蛋白機能の解明に大きな道筋が開かれたことによる.そのめざすところは,高スループットの方法論とバイオインフォマティクスに裏打ちされたすべての生命活動のプロテインプロフィルの実現であり,言い換えれば,すべての細胞,組織,臓器から生体全体に至る蛋白機能の統合化を縦軸に,個体の誕生から死の瞬間に至るまでの秒単位の時間軸を横軸として織りなす,生体生命活動シミュレーションの壮大な世界の登場にほかならない.ここから遠望される未来の医学・医療は,少なくともすべての学問領域との融合,統合を繰り返しながら,個人の一生のテーラーメイド健康管理,健康保持に中心をなすことが期待される.遺伝子と環境因子にまたがるありとあらゆる個人情報データファイルが集積され,すべての研究領域からの成果がプロテオミクスへと集約されて,50年~100年のスパンで人がヒト自身の心と体を深く学び知る時代へと進展して行くと思われる.
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