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はじめに
スーパー抗体酵素(Antigenase)とは,読んで字のごとく抗体でありながら酵素作用を有しているからであるが,その最大の特徴は標的とした蛋白質を完全分解することができ,しかもその活性が天然酵素に近いという素晴らしい性能を示すことである.わかりやすくいえば,狙撃兵のように悪性のウイルスや細菌の外膜蛋白,癌細胞表面に発現している癌抗原,あるいは,病因となる蛋白質等,標的となる分子を狙いどおりに攻撃・破壊することが可能である.つまり,抗体のように抗原特異性を維持しながら,抗原を酵素的に分解する.実はこうした抗原特異性を持ち,かつ,酵素作用を示す“夢のような分子”の研究は長年行われてきたが,これまで誰も手にすることはできなかった.筆者らは,偶然,このような分子が存在することを発見した.こうした性質を持つ抗体をスーパー抗体酵素と名付けたのは,標的となる抗原分子を特異的に酵素分解するからである1).抗原分解速度が「スーパー」(速い)と,時折,誤解されるがそうではない.さらに,詳細な実験結果が集積されるにつれ,かつて1986年に報告されたAbzyme(抗体触媒)2)とはそのconceptおよび抗体酵素としての特徴が全く異なることが判明し,現在ではスーパー抗体酵素をAntigenase(Antigen decomposing-enzyme:抗原分解酵素)と呼んでいる3,4).
以下にスーパー抗体酵素(Antigenase)の特徴を説明するが,将来,医療,検査・診断,バイオ環境制御,新型バイオ素子など多くの分野への展開が期待されている.本稿では臨床検査からの視点でAntigenaseの今後の展開を考えてみたい.
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