形態学的検査と技術 血液と病理
わだい
酵素抗体法のはなし
堤 寛
1
1東海大病理学
pp.609
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203713
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私たちはふだん,病理診断にも研究にも,ペルオキシダーゼ標識抗体法(酵素抗体法間接法ないし直接法)を用いており,PAP法やABC法はほとんど行っていない.私たちがPAP法やABC法を用いない理由の一つには,当院三階の当病理学教室と同じ三階フロアに,酵素抗体法の考案者であるほかならぬポール中根教授が,細胞生物学教室を構えていらっしゃることが挙げられる.ただし,もっと大きな理由は,①PAP法やABC法が3ステップを要するのに比して,酵素抗体法間接法では2ステップですみ,時間的な節約ができるためルーチン化に好適であること,②経験上,PAP法やABC法と間接法で感度の違いをまったくといってよいほど感じないこと(つまり,他法で陽性なら間接法でも陽性で,間接法で陰性なら他法でも陰性!),③凍結切片を用いた電顕レベルでの抗原局在観察には標識抗体法,特に直接法が最も適していること,などなのである.
ルーチンの病理診断業務に関していえば,東海大学病院病理診断科では,常時100種以上のマーカーがオーダーでき,免疫染色は週3回程度行われている.抗体類は,適宜希釈後にディープフリーザーとディスポーザブルアンプルによる"品質管理"が行われている.もし,これだけの抗体を大きな風体のキット品を用いて管理しようとしたら,検査室中が冷蔵庫だらけになってしまうであろう(例えば,DAKO社製PAPキットの冷蔵庫占拠率は驚異的でさえある!).‘The simpler, the better’が私たちのモットーである.
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