特集 大災害に対するリスクマネジメント
災害に対応した医療体制—日本赤十字社支援による現地病院の災害医療
上林 恒雄
1
1神戸赤十字病院
pp.844-846
発行日 1995年9月1日
Published Date 1995/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903826
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そのとき,前夜からの救急診療を終えて,医局でカルテの整理をしていた露野循環器科部長は,とっさに机の下にもぐりこんだ.揺れがおさまると,廊下へのドアが開かない.1階の窓から外に脱出する.夜勤の看護婦が廊下に出たとたん,ドーンという音と共に身体が大きく振り回された.薄暗い廊下の壁をつたって人工呼吸器使用の患者のところにたどりつき,アンビューを押しているうちに大きな余震が次々と襲ってくる.ベッドから落ちた患者,腰を抜かして病室の入り口に座りこんだ患者,廊下を大声で走り回る患者,点滴台は倒れ,窓ガラスは破れ,天井に穴が開きコンクリートの塊が落ちてくる.給湯器の配管が引きちぎれ病室は水浸しになり大混乱であった.家族に「子供を頼むよ」と家を出た看護婦は機動隊の車を追いかけて便乗し病院に向かった.夜明け前の須磨海岸を毛布を被った人たちが脱出する光景が見られた.
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