レポート
病院コストの地域格差—現行診療報酬で対応可能か
太田 圭洋
1
1名古屋大学医学部附属病院医療情報部
pp.1046-1051
発行日 1999年11月1日
Published Date 1999/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902852
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病院経営が「冬の時代」に入ったといわれて久しい.多くの医療機関は1980年代に始まった医療費抑制政策の中,生き残りをかけて必死に経営努力をしている.しかしながら平成9年9月に中央社会保険医療協議会(中医協)が行った医療経済実態調査では,回答のあった1,069の一般病院の医業収入は全体で月額436万円(医業収入の2.7%)の赤字であり,相変わらず「冬の時代」が続いていることが再確認された.また平成8年に厚生省健康政策局の行った民間医療法人病院の決算分析でも,1,077の一般病院のうち実に23%に当たる246病院が赤字であるとの結果が出された.
この厳しい経営環境の中で,最近特に都市部の病院経営者から,医療経営環境の地域格差が都市部の病院経営をいっそう厳しいものにしているという指摘をよく耳にする.以前から地域格差・官民格差が大きな不満の種であったわけだが,近年地域格差問題が大きな関心事となってきているのは,次回の診療報酬改定で包括支払い方式がより広く採用された際,医療提供コストの地域差が考慮されない現状が続けば,都市部と地方の病院経営環境の差がいっそう拡大すると危惧しているからである.また,平成12年度に開始される介護保険制度に地域格差が導入されることも一つの要因であろう.
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