特集 キャピタル・コストの確保をめぐって
資本コストをめぐる診療報酬体系
濃沼 信夫
1
1東北大学医学部病院管理学
pp.428-432
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901227
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はじめに
わが国の医療は,その財源の約9割が税金と保険料で賄われ,無限の持続的な経済成長を前提に,国民の健康と安心を保障してきた.昭和30年代半ばに,現在の診療報酬体系の原型である「新医療費体系」が確立され,国民皆保険が実現して以降,30年以上の長きにわたり,診療報酬の屋台骨は順風満帆の経済成長によって支えられてきたといえる.人口の高齢化,医療技術の進歩,国民の医療のニーズの増大などは,国家や国民の医療支出を大幅に増やすことなく,主に経済成長による国民所得の増加分,すなわち税金と保険料の増収分によって吸収されてきたのである.このため,これまでは経済成長に依存するという構造的な課題が顕在化しにくかったともいえる.
しかし,わが国の経済成長はここにきて急激に失速し,将来はマイナス成長にもなりかねない厳しい時代を迎えている.このため,国民所得の伸びの範囲でしか増加の望めない医療財源の課題が一気に深刻化している.しかし,財源の積み増しや新たな財源をにわかに求めることはできず,経済の浮き沈みによらず加速度をもって進行する医療ニーズの増大と,財源の凅渇とのミスマッチによって,医療機関の経営基盤は大きく揺らいでいる.
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