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健全経営崩壊の序章
2002年度の診療報酬改定による診療単価の減少と,同年10月の老人医療費の定率負担増,また2003年4月に施行された健康保険本人の1割負担増,介護報酬制度改定による施設介護保険料のダウン影響(シミュレーションでは100床当たり月額の報酬料が200万円のダウンといわれている),さらに追い討ちをかけるようにSARS(重症急性期呼吸症候群)の影響で受診者の来院控えによる外来患者数の減少と,医業収入の確保はさらに困難となっている.
これらの要因はいわゆる病院の経営基盤である,「診療単価」の減少と「患者数」へ影響を及ぼし,基盤崩壊の兆しが色濃くなっている.聖路加国際病院においては本年5月の連休明けから(実際には7月22日稼働),全面的に電子カルテ・画像のファイリングシステムへ移行するため,混乱を最小限に抑えることを目的に外来患者数の予約制限を図り,病棟ではシステム移行の訓練期間と新人教育のさなかにぶつかり,5月の入院・外来の患者減少は医業収入に多大な減少を与え,2003年度の収入予算を達成できるかが大きな課題となっている.一方,医業費用はカルテの電子化,画像・内視鏡などのファイリングシステムの開発費と,機器の購入などの費用,光LAN 配線設備工事などで多額の投資を行い,さらに新病院オープン後11年目を迎えて,医療機器・設備の更新,来年度からの新医師臨床研修医制度に伴う宿舎の問題,生き残るための新規戦略である予防医療センターの拡大・充実のための移転計画と,跡地利用の改修工事も予定され,収支のバランスが不均衡の年を迎えている.このために,夏期の賞与は前年度の下期の実績評価のため,昨年並みの支給ができたが,今年度冬期賞与については,昨年実績より6万円カットせざるを得ない状況を労働組合との交渉で説明し理解を得た.
当院はこのような状況であるが,参考のため11病院経営比較検討会(同規模の病院が集い経営の比較検討を11年にわたって継続している)のメンバー病院の入院延患者数増減率と外来1日増減率を調査したものが図1,図2である.
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