医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性
患者の病感に向き合うとき(1)
山本 和利
1
Wari YAMAMOTO
1
1自治医科大学大宮医療センター
pp.779
発行日 1990年9月1日
Published Date 1990/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900733
- 有料閲覧
- 文献概要
違和感はどこから
患者が医師を訪れ,診断をつけてもらい,治療法を確定してもらったにもかかわらず,何かしら釈然としないものを感じて医師のもとを去る,といった経験を持ったことはないだろうか.患者側からみると思っていることの半分も伝わらないようで,何か期待が裏切られたような妙な違和感を医師との間に感じてしまう,そんなことが往々にしてあるように思う.私は医師なので,こんな言い方は無責任のように聞こえるかもしれないが,日々医療に携わりながらそんなことをふと感じてしまうことがある.
私たちは医学部教育の場や,初期研修の現場で,「医師は患者に優しく接しなければならない.患者を包括的にまるごと人間としてみなければならない.」と教えられてきた.患者は実際には病気(disease)といえなくとも,主観的に病気と思いこんで(illness)医師を訪れる場合がある.しかし,医療の現場では,この患者の悩んでいる問題(illness)を解決する前に診断をつけることが優先されがちになる.そのことから,患者が望んでいないような無理を押しつけられるようなことも出てくる.それはよく指摘されるように,医療が専門分化し過ぎ,患者を包括的に診ず,臓器のみを診るという傾向にあるということが一因となっていると言えるだろう.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.