医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性
患者の病感に向き合うとき(2)—留学生M氏の場合
山本 和利
1
Wari YAMAMOTO
1
1自治医科大学附属大宮医療センター
pp.870
発行日 1990年10月1日
Published Date 1990/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900757
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診られる側の意見に聞く耳を
感冒症状で医者にかかり,「風邪をひいたようなので薬を欲しい,」と話したところ,「診断するのは医者だ.余分なことは言わなくてよい.」と言われたという話を時々耳にする.一般的に,日本ではまだまだ父権的な権威主義が横行しており,患者の意見や考えを聞く耳は持たない医師が多いように見受けられる.また,ちょっとした感冒症状であっても診る医師によって血液,尿検査をしたり,レントゲン撮影をするものから,感冒薬などの簡単な処方で終わるものまで様々である.
ここで最近あった医師—患者間の治療法に関して意見のあわなかった例を紹介しよう.私の住む新潟県の人和町には国際大学があり,アジア,アフリカからの留学生が時々受診する.ガーナから来た26歳の弁護士M氏は口渇,多飲,多尿を主訴に受診した.外来担当医師は糖尿病を疑い,糖負荷試験を行った.その結果,血糖値が非常に高く,同時に測定したインスリン分泌が悪いので即,人院してインスリン皮下注射療法を勧めた.しかし,本人は入院とインスリン皮下注射療法を拒否し,医師も自分の考えを譲らず,2時間以上話しても折り合いがつかず,次回持ち越しとなり,私の外来に回ってきた.
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