医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性
プライバシーは高くつくのか
さとう つねお
Tsuneo SATO
pp.681
発行日 1990年8月1日
Published Date 1990/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900709
- 有料閲覧
- 文献概要
旧態依然の生活空間
ある有名な大学病院に入院見舞で友人を訪ねた.高層ビルに1,000床以上の病室を持つ大きな病院である,設備も一流で,医療面に関しては何らいうことはないように思われた.だが,心理面を考えると,入院している患者個人個人に対する生活空間は旧態依然として少しも進歩は見られない.というのは,大部屋に入院している患者にとっては,プライバシーを完全に放棄しなければ入院生活を続けて行けないからである.
ごく普通の8人部屋でベッドの間隔は5〜60cm,用のある時はカーテンで閉ざせるが,布一枚である.目を上げれば両隣,向かい側の4人の患者は常に視野に入る.全て他人である.知らない個人同士の侵されないプライバシーの空間は80cm以上というデータがあるときいた.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.